「CARE LAND」では病気・障がいの当事者とその支援者が使えるクローズドなSNSを運営しています。

特に患者数の少ない病気では情報共有が難しく、孤独感を覚える人が多く存在している現状があり、SNSを使って「情報共有」を行うことで、「1人じゃないと気付ける場」が当事者やその家族にとっての価値となっています。

また、患者同士の支え合いはソーシャル・サポートという概念から国の医療費削減にも有効であるとされており、社会的に意義の高いサービスです。

病気・障がいの当事者とその家族の課題や国の医療費削減に取り組むCARE LAND代表理事の金澤裕香氏にお話を伺いました。
社会起業家 金澤 CARE LAND

プロフィール

金澤 裕香 一般社団法人日本障がい疾患家族支援協会 代表理事

大学卒業後製薬会社勤務。2014年長女の病気発覚を機に退職。長期付き添い入院や在宅看護を通して多数の病棟・在宅看護師と関わりを持ってきた。

現在は週5日の訪問看護や在宅リハビリ・通所を利用しながら在宅で看護を続けている。

昨年9月、闘病の体験から疾患特化型SNS『CARE LAND』を立ち上げ、病気・障がいを持つ人とその支援者のためのプラットフォームとして (現登録約500疾患)情報共有と仲間作りをサポートを続けている。

既存の方法は「完璧」とは限らない

――「CARE LAND」で取り組まれている社会課題について教えて頂けますか。

金澤:「CARE LAND」は病気・障がいを持つ当事者とその支援者にオンラインで情報と仲間を届けるオンラインプラットフォームです。

病気・障がいにより「家や病院から出にくい」、「同じ状態の人になかなか出会えない」人々を対象にしています。

その背景には「既存のSNSでは病気・障がいに関することを発信することが難しい」という社会課題があります。

自分に統合失調病の妹さんがいると想像してみてください。それを凄く自分が悩んでいたとして、1日の大半を妹さんのために使っていたとしても、SNSにつぶやいて助けを求める事は躊躇するのではないでしょうか。

今、SNSと日常生活は健常の方には切っても切れないものになっていて、SNSを通して情報と仲間を得ることが主流になっています。

一方で、病気・障がいに関してはそれがまだ成立していません。だからそれを成立させたいという想いで病気・障がいの方という広い共通項で繋がれるクローズドなSNSを開設したことが始まりとなります。
CARE LAND 金澤裕香 病気・障害
――自分の周りに病気・障がいを持った方がいないので気付かなかったのですが、その人たちが自分の悩みを打ち明ける場や情報を共有する場を求めるニーズがあったということでしょうか。

金澤:そうですね。今までも患者会や病気専用のSNSがあり、そのようなニーズを満たす場がありました。

しかし、病名でくくることが既存のコミュニティで行われていることでした。「CARE LAND」が他のコミュニティと大きく違うところは、病気・障がいというくくりになっていることです。

コミュニティ内には「精神」、「身体」、「大人」、「子ども」、「当事者」、「家族」など様々な方が入れます。病名と重症度でのくくりがないことが一番の特徴です。

例えば、インフルエンザになってしまって、熱が高くても食べられるものが知りたいときに、その質問は別にインフルエンザの人に聞かなくてもいいのではないかと思います。

熱が出る病気はたくさんあり、皆さんが情報を持っています。だから、病名でくくらなくても発信すればたくさん回答が返ってくることがより望ましい環境です。

しかし、今は既存のコミュニティが病名でくくることが主流になっているので、困りごとを相談する人数が非常に少ないという課題があります。

病気特有の困りごとは、悩みの一側面です。車いすでの外出とか、お薬の飲み方などは病名に限らず相談できることですので、病名でのくくりを外して、情報交換する場を提供しています。

自分自身の課題解決を皆にも届ければそれが「サービス」になる

――どうして病気・障がいの課題に取り組もうと思われたのでしょうか。「CARE LAND」を立ち上げたきっかけについて教えて頂けますか。

金澤:一番は、私の娘が病名不明の重度の障がいを持っているのですが、3年間の入院生活を一緒に送った時に、情報不足に凄く悩んだ経験があったことです。

大学病院という情報の最先端であるはずの場所にいましたが、その中でも得られない情報が多く、オフラインの患者会もなく、ネットで検索しても何も出ない状況で、情報不足に非常に悩みました。

病名不明のため、どこかの患者会に所属することすらできなかったです。非常に苦しみましたが、とにかく「共通点を探して情報を得る」ことにしました。

すると、この方法が意外に良く、その時に病名でわけて情報を集める必要はないのだと気付きました。

その経験から、病名くくりのないSNS「CARE LAND」を着想しました。
CARE LAND 金澤裕香 医療費削減 社会起業家
――ご自身の原体験が強く現れている「CARE LAND」は具体的にはどのようなサービスになっているのでしょうか。

金澤:サービスとしては、様々な病気・障がいを持った当事者とその支援者が加入できるクローズドなSNSを運営しています。

大きな機能として3つあり、1つはコミュニティ機能です。特定の疾患や困りごとで、非公開のグループを作ることができます。

例えば「難病の疾患コミュニティ」や「バリアフリーのお出かけ情報コミュニティ」などがあります。

2つ目は病状日誌です。ご自身の日々の体調の変化や出来事を記録することができます。

3つ目が質問掲示板です。ユーザー全員に向けて質問を投げかけられる機能になっています。

「CARE LAND」では、「個人情報は最小限に疾患情報は最大限に」というポリシーを持っています。

ユーザーは匿名ですが、病名や症状・当事者との関係性が(任意で)表示できるようになっており、コミュニケーションがとりやすくなっていることも特徴です。

サービス規模の拡大は「トレードオフ」でもある

――医療分野は非常にデリケートでサービスとして取り組むにはたくさんの障がいがありそうなのですが、取り組む中で大変だったことにはどのようなことがありましたか。

金澤:最近ですと、精神疾患の方が「死にたい」と投稿してしまって、運営にたくさん通報がくる事態がありました。

コミュニティの中には余命宣告を受けている方もいらっしゃいますので、その投稿を見ることが非常につらい方もいます。

運営としては「CARE LAND」が患者同士の情報共有と仲間集めをサポートするサービスなので、そのような投稿は控えて頂く措置を取りました。

しかし、精神疾患の方が感情を吐き出す場所が必要であることも何人もの方にヒアリングを行い実感しました。現在は専門のNPOさんと提携しながら、サポートを続けています。

おそらく、「CARE LAND」がより大きなコミュニティになると、医療に関わるサービスとして直面する問題がいっそう増えてくると考えられますので、その対策はすぐに取り掛からなければならないポイントだと思っています。
社会起業家 金澤裕香 CARE LAND
――たしかに。規模が増えてくると「自分が意図していなかった方向」に進んでしまうことや「想定していなかった課題」に直面することがたくさんあると思います。

金澤:そうですね。病気によってニーズが様々なことも日々実感しているので、どこにCARE LANDの価値を置くかは今後の大きな課題です。

――反対に嬉しかったことにはどのようなことがありましたか。

金澤:「CARE LAND」のコンテンツの1つにオンラインお茶会というものがあります。病気や障がいなど様々なテーマで人を募ってお茶会をオンラインでやる企画です。

そこで、日本で100人以下しかいない病気をテーマにお茶会を行ったときに、参加したお母さんの1人に「自分の近くに1人も同じ病気の子どもを持った親がいなくて孤独感を感じている」、「子どもは可愛いけど、子育ては楽しめなかった」というお母さんがいらっしゃいました。

「うちの子は他の子とは違うんだ」、「同じように悩んでいる家族はいない」と凄く孤独感を感じていたそうです。

しかし、「CARE LAND」に入って初めて同じ疾患の子どもの子育てをしているお母さんに出会って、オンライン交流会で実際に顔を見て、凄く泣いてくれました。

「ずっと宇宙に1人だと思っていたけど、こんなに近くに同じような人がいて、自分たちって1人じゃなかったんだ」と気付けて嬉しかったと言って頂けました。

このような場が提供できるのは「CARE LAND」ならではだと思いますので、やっていて良かったと感じた瞬間でした。
CARE LAND 金澤裕香 社会起業家 病気・障害

大変な経験をしてる人ほど「社会に対して発信」できることがある

――人の命に関わる医療分野ですので、大変なことが非常に多いと思いますが、サービスで成し遂げたい価値が実際に生まれる瞬間の嬉しさがあるからこそ頑張れるのだと思います。

最後に「CARE LAND」の今後の展望や社会課題に取り組む人へのメッセージをお願い致します。

金澤:展望としては、全ての患者と家族がお入り頂けるという方針でサービスを立ち上げましたが、最初から全ての患者と家族にお使い頂ける環境を整えることの難しさも実感しています。

そこで、今後は運営側として対象者を3つのフェーズに分けて重点的に取り組んでいきます。

第1フェーズはCARE LANDの理念である「病気・障がいがあり家や病院から出にくい人」「同じ仲間に出会いにくい人」として希少難病疾患の方、重症患者さん達を対象に運営します。

第2フェーズでは、「外出はなんとかできるが日常生活で孤独を感じている」、「情報を得ることが難しい方」を対象としています。来年、再来年以降はこの方々が使いやすいSNSにするため、改善と拡大に取り組んでいるところです。

そして、最後のフェーズで全ての病気・障がいの方に利用しやすいサービスにしていきたいと考えています。

5年後には「日本の新しいプラットフォーム」を目指したいです。
社会起業家 金澤裕香 CARE LAND
メッセージとしては、「働きたくても働けない方」、「子どもが病気で思うような人生を送れなかった方」、「普通の企業に勤めて普通に生きていくことが難しい方」に私のやり方が1つのモデルとして発信できたらいいなと思っています。

私の子どもは「医療的ケア児」と言われていて、体に医療機器をつけて生活をしなければならないのですが、これは今、日本に2万人ほどしかいないと言われています。

ほとんどの親は子どもの世話に時間を取られて働けていない。働きたいと思っても企業は雇ってくれない現状があります。私もそうだったのですが、それでも何かしたいと思って「CARE LAND」を始めました。

これから、同じように病気・障がいに関わりながら生きていく人たちに、一つのケースとしてお届けできればと思っています。

一緒に歩んでいけるような仕組み作りを推進していきたいです。

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