シェアメディカルでは「メディライン」という医療用チャットサービスを展開しています。

メディラインは、機微な医療情報を医療者がオンラインで安全にやりとりすることに特化して設計され、医師、看護師、薬剤師、ケアマネージャーなど多職種間で患者さんの情報を共有・連携し、地域医療連携を支援しています。

今回は、テクノロジーによって医療業界の効率化を図り、持続可能な医療の実現を目指すシェアメディカル代表の峯啓真氏にお話を伺いました。
シェアメディカル 峯 啓真 インタビュー

プロフィール

峯 啓真(Yoshimasa Mine)株式会社シェアメディカル 代表取締役CEO

1972年、静岡生まれ、幼少期は東京で過ごす。
1980年台、黎明期のパソコンに興味を持ち、電電公社が民営化しNTTとなった時を境にいち早くパソコン通信を始め没頭。ネットワークを通じてグループコミュニケーションを行うことを得意とし、高校生でありながら数千人を要するいくつかのフォーラムの管理人(シスオペ)を務める。

2000年台、いくつかのベンチャーにて、商品開発や工業デザインを手かげ、エッセンシャルオイルの輸入や商品開発などを行う。この時、アロマオイルの人体への作用について薬学的な視点から、独学で人体の生理作用について学ぶ。

2006年、日本最大級の口コミ病院検索QLifeを始めとした株式会社QLifeの創業メンバーとして請われ同社Webサービスの立ち上げに参画。
2008年iPhone上陸と同時にスマートフォンの医療分野での親和性ををいち早く見いだし、病院検索、お薬検索など医療アプリを相次ぎリリースし事業化に成功。『収益を生む制作チーム』をコンセプトとして、医療ビジネスを多く立ち上げる。

2014年、より臨床現場に近い医療サービス企画を目指し株式会社シェアメディカル創業。
2015年、8年に渡り医療業界を見て感じていた医療者用のネットコミュニケーションツールが無いことに気が付き医療者用コミュニケーションツール『メディライン』を開発

シェアメディカルが取り組む医療業界の課題

ーーシェアメディカルで取り組まれている社会課題について教えていただけますか。

峯:1つの社会課題として捉えているのは皆保険制度の崩壊についてです。国の社会保障費が膨らみ続けて、このままだと間違いなく皆保険制度自体を維持することが難しくなってくるのではないかと思っています。

国の医療費は45兆円を超えていて、すぐに50兆円も超えると推計されているなかで、医療を必要とする後期高齢者の増加もあり大胆な改革が進まない状況で制度を廃止するわけにもいかないですし、国としては何とか延命させようと様々な施策を打っているところです。

しかし、医療制度は国の政策の根幹に関わります。根本的な改善が難しく政治問題化すれば決められない状況が長引くだけです。延命をしているだけでは結果的に医療者か患者さんにしわ寄せがいってしまいます。
シェアメディカル 峯 啓真 インタビュー 社会起業家
こうした誰かの犠牲の上に成り立っている産業がうまくいくはずがないので、持続可能な医療を実現させるためには、我々のような民間企業がテクノロジーや技術を駆使しして効率化しマーケットを育てていかねばならないと考えています。

そこで、我々が日本の医療の専門会社として医療×テクノロジーのMediTech(メディテック)業界を創り上げていこうとしています。

当事者でないからこそ気付けた課題

ーーどうして医療業界に取り組もうと思われたのでしょうか。もともと医療業界でのバックグラウンドがお有りだったのですか?

峯:もともと私はエンジニアとして社会人デビューしたのですが、ひょんなことから今で言うところのUI/UXデザインを専門に行うようになりそれ以降はデザイン畑です。

フリーランスとなってからはWEBデザインも手がけました。キャリアの出自はデザイナーと言ってもいいくらいです。

ある時、デザイナーとしてアロマのボトルデザインやパンフレットの仕事を手がけました。

元々、理系なので、例えばラベンダーの香りを嗅いだらリラックスするというクライアントの説明に疑問を持ったんです。

「香りをかいただけでなぜリラックスするのか?」何の成分が関係してリラックスするのか解き明かしたくて、脳の血流を測ったり、香りを嗅ぐことでどのような生理的変化が人体に起こるのか勉強してみたことが医療の世界に入ったきっかけです。

そこから、WEBもできるし医療も薬学についても理解があるということで、前職で新規事業の立ち上げを任されて医療の世界にどっぷり浸かりました。
シェアメディカル 峯 啓真 インタビュー 社会起業家
前職では病院の口コミサイトや医薬品の検索サイトを立ち上げました。これは大成功しました。

次に医療アプリも作りこれもダウンロード数で言えば総合ランキングに乗るほど成功しました。

そのように取り組んでいるなかで医療業界の様々な課題が見えてきました。そして東日本大震災を期に単に医療を合理化するだけではいけないと思って独立したのです。

そして、僕が起業するにあたって最初に着手したのが医師を救うことでした。

ーークリエイティブ系のバックグラウンドで、医療者ではない立場で医療業界に関わったからこそ気づけたところもあるんでしょうか。

峯:そうですね。フラットな部分で見えてきたことが結構あって、広い視野でものを見れたのは良かったですね。

医療×ITの世界で起業する人は3種類いて、僕みたいにITから入るのは結構レアケースだと思います。

他には、医師や薬剤師などの医療者が起業するケースと患者と患者の家族が起業するケースがあって、だいたいこの3つに分類できると思います。

後者の2つに関しては、ある意味やりたいことが明確に見えていて、課題感は強いのですがテクノロジーで何ができるかについてはあまりわかっていません。

実は医療界に存在している課題はIT側からすると大した要件でないことも多いのです。

でも、なぜか医療と着くと急にハードルが上がるように感じる風潮があります。

技術的には大したことない要件なのに医療とつくだけでハードルが上がった気がするからIT側の人は手を出したがらないし、責任だけは重いと感じるようです。

一方で医療者側も忙しいので、テクノロジーを学んで取り入れることがなかなかできないんです。

例えば音声認識ってありますよね。今はだいぶ精度が高いので医療者サイドではキーボードを使わずに書きたいと考える。

一方、IT側は変換精度が低いと二の足を踏む・・でも医療側から言わせれば日常のキーボード入力でも誤変換があるし、変換精度は高いに越したことは無いけど、IT側が臆するほど気にしていなかったりします。むしろテキストになってることがなによりありがたいのです。

両方の知見があるからこそ、見えたり分かったりすることがあるので、そこを埋めていくことが我々の事業ですね。

日本のテクノロジーへの向き合い方

ーーたしかに医療と聞くと専門性が必要な気がしますし、人の命を預かる分野でもあるのでバックグラウンドがない人にとってはハードルが高く感じますね。

峯:IT側で入っていくときは医療業界と医師が大切にしていることをしっかりと理解していることが重要です。

そこを理解しないで踏み込んでしまうと、かつてあった医薬品のネット販売のようないらぬ軋轢が生まれてしまうのだと思います。

「便利だから良い」っていうことじゃないのはその通りで、どこかでやはり規制をしなければいけません。

でも、全て「NO」と言うのも違うと思います。

そうじゃなくて、どこまでやるのはOKなのかラインを引くべきです。
シェアメディカル 峯 啓真 インタビュー 社会起業家
「ここまでやるなら一緒にやりましょう。でも、ここまでやったら危険なのでやめてください。」

そういう反応の仕方をしないと業界は変わらないと思います。

だからこそ、どちらの領域もよく理解している人たちがしっかりと利便性を高めたものを提供する義務があると思うのです。

ーー〇〇×テクノロジーは、業界によって二極化している気がしますよね。すんなり入っていくところと完全に拒絶するところに分かれているような。

日本ではそれが顕著に表れていて、他の国では業界にかかわらず浸透が早いという印象を持っています。

例えば、米国ではどの分野にも積極的にテクノロジーが導入されているようです。その辺りは米国と日本の文化だったり体質の違いがあるのでしょうか。

峯:ありますね。ソフトバンクの孫さんが昔おっしゃっていたタイムマシンモデルが日本の医療業界に関しては通用しません。

厳しい規制社会なので、アメリカで大丈夫だからといってそれが日本で使えるかといえばNOなんです。

良くも悪くも皆保険がイノベーションを阻害する側面は最近よく現れてきました。

遠隔診療などがそうですが、かつて存在しなかったものを旧来の法体系の枠組みの中に落とし込もうとすると、どうしても無理が出ます。そして官僚だけでは解決できないと政治問題化してさらにややこしくなっていったりするのです。

なので場合によっては、制度を変える必要もでてきます。僕もあえて大手町にオフィスを構えているのは霞ヶ関が近いからなんですね。

制度や規制と戦うことも医療×ITに取り組もうとしたら必要になることです。

シェアメディカルのサービス「メディライン」

ーー現在は具体的にどのようなサービスを展開されているのでしょうか。

峯:「メディライン」という医療者向けのコミュニケーションツールを提供しています。

医療業界はお互いに学び合う世界でありながら、未だに全国7000の病院で同じ内容の
勉強会を別々に作り上げてやっています。

どこかで作ってみんなで共有したらいいんじゃないかというのがサービスの最初の出発点でした。

優れた知見を持っている人が他の人たちのレベルを向上させることがどうしてできないのか。ネットを使ってなぜ実現しないのかに疑問を持ったのです。

すると、医師はネットのセキュリティー面を懸念していたようで、患者さんの情報をネット上で安全にやり取りすることを実現することに努めたのが「メディライン」です。

今後は医療者のコミュニケーションツールとして一種のプラットフォームを目指し、その上に新たなアプリケーションなどを乗せて連携できるようにしていこうとしています。

折しも、在宅診療などが推進されるようになり、医療者が外に出て行くことが増えてきたことが一つの追い風になっています。

安全にクリニックから検査データをやり取りする方法が当時はなかったので、そこに活用して頂いくことが多くなりました。

ーー今までの運営を通して大変だったことにはどのようなことがありますか。

峯:やはり収益を上げていくことですかね。医療業界で保険点数が付かないサービスは、利益を出すことが難しいんです。

メディラインはユーザー課金をしているので医師からお金を頂いています。

これは起業する時から絶対失敗するからやめろと言われていたマネタイズ・モデルです。

しかし、良いものにはお金を払うという文化を根付かせないとマーケットを作ることはできないと考えています。
シェアメディカル 峯 啓真 インタビュー
誰かが払ってくれるでしょうと健康保険などに頼って、結局引っ張ってくるお財布をそこにしてしまうと、私はテクノロジーによって何とか国の医療費を下げようとしているので、矛盾が生じてしまいます。

だからこそ、その文化を根付かせることに凄くこだわりました。

ーー嬉しかったことにはどのようなことがありますか。

峯:やっぱり感謝されることですね。

専門医の先生から頼られる経験なんて普通の仕事をしていてそんなにないと思うんです。

そのような方々から「助かった」、「これがないと仕事にならないよ」と言われることがモノを作る人間としては一番嬉しいことですよね。

幸い医師というなかなか会えない人たちに対して近しい立場にいるので、直接声を聞くことができます。

一番近い位置にいて頼られることが嬉しいですし、なんとかしたいなと思う気持ちになります。

もちろんゲームを作っているわけではないので、フリーズしましたとか落ちましたが許されない世界です。

我々のメディラインは直接生死に関わるものではないですが、使っている方々が生死に関わる仕事をしているので、その責任を感じる部分があります。

何があってもすぐに起きて対応しなければならないので、最初の2、3年ぐらいはずっと携帯を握りしめて寝てましたよ。

実行できるスキルだけではなく、課題に気付くことだけにも価値がある

ーー医療業界に関わるのは大変だと思いますが、その分貢献の喜びも大きそうですね。最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

峯:今後の展望として、MediTechのマーケットはあるにはありますが、まだまだバラバラだと思っていて、なんとかまとめられるような立場になりたいなと思います。

自分自身がそんなに大したことをやっているとは思っていませんが、周りで取り組んでいる人たちに聞いてみると、やはりどこもマネタイズなどに困っていると言います。

しっかりと収益化できているプレーヤーが少ないので、民間のマーケット文化を創っていき、MediTech分野をもう少し世の中に認知させて、バズらせたいです。

メッセージとしては、気が付いてしまったら行動して欲しいということです。ニーズとマーケットを見つけられれば、あとは行動あるのみです。

その世界を知ってしまって、何か困っている人がいて、あなたが助けるための知識やノウハウを持っていたとしたら、それはあなたに課せられた使命なんだと思います。

迷ってやらないで後悔するより、盛大に失敗した方が次に繋がります。それは絶対に言えることですね。
シェアメディカル 峯 啓真 インタビュー 社会起業家
むしろ突き抜けてしまえば、助けてくれる人が現れます。失敗したとしても「じゃあウチに来いよ」と言ってくれる人が出てくると思います。

だから臆することなく行動して欲しいです。今の世の中、挑戦するにはすごくいい時代だと思います。羨ましいです。

一見、何も不満がないように見えていますが、よく見てみると世の中課題ばっかりです。

それを見つけることができれば、あとは適切な解決策を見つけて、市場に届けることです。

エンジニアなら何らかのテクノロジーの手段で実現するべきだし、デザイナーならデザイン力で世の中を動かせる、物書きなら何か世の中に発信することもできると思います。

手段がなければ、できる人を探すことも大きな手段です。

「私なんかスキルが何もない」と思っている人でも、むしろ課題に気付けている人の方が一番価値があるのです。

苦手なことはなるべく人に頼る。結局、人には平等に24時間しかないので、一人でできることには限界があります。

一緒にやろうと人を巻き込んでいくことが、これからチャレンジする人にとっては良いのではないかと思います。

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