人口減少と高齢化の進む日本。都市部にもその影響は徐々に出つつありますが、より深刻な状況にあるのが農村部です。

農村部には、人口減少と高齢化の影響でコミュニティの維持が困難になった集落、いわゆる「限界集落」が多く存在します。

今回は、限界集落問題とは何かをとりあげながら、その解決策としてのコミュニティビジネスの事例を紹介します。

限界集落とは

限界集落とは、社会学者の大野晃氏が1991年に提唱した概念。65歳以上が人口の半数を占め、冠婚葬祭をはじめとする社会的共同生活の維持が困難となった集落のことを指します。

限界集落に関するデータ

2015年のデータでは、限界集落は全国で15568集落あり、これは全集落の20%に相当します。
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数としては中国地方、四国地方、九州地方に多く、集落の中に占める割合としては、四国地方が最も多くあるという状況です。

限界集落の問題点

限界集落の問題としては大きく三点が挙げられます。

1つ目は空き家問題です。限界集落では、高齢者が亡くなってしまったときに、後を継ぐ人が市街地や都市部に出てしまっていると、住んでいた家が空き家となります。

空き家は解体するにも数百万円のコストがかかるため、解体することは容易なことではありません。
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また、たとえ壊れている空き家があっても行政の権限で壊すことは難しいのが現状です。壊れた空き家は景観を壊すだけでなく、空き家の瓦やガラスが飛んで近所の住民に危険が及んだり、犯罪の温床となったりします。

2つ目は農林漁業の問題です。限界集落の多くは、平野地域と山間地域の中間にあたる中間地域と、山間地域からなる中山間地域にあります。

日本の耕作面積の4割はその中山間地域に存在します。限界集落が増えていくと、そこで営まれている農林業は営むことが困難になります。

農業が営めなくなると、耕作放棄地が増えるとともに、現状40%ほどの食料自給率がさらに低下すると考えられます。林業が営めなくなると、山林の持つ機能も失われていきます。
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山林の多くは、間伐など一定の管理をしないと、日照機能の不足から地表の植物が育たなくなり、保水機能を失い、表土が流出してしまうのです。表土が流出すると、漁業にも影響が出ます。

森林の土が持つ栄養分は海を豊かにし、海でとれる魚の生育にも森林の崩壊は悪影響を及ぼすと言われています。

また、森林の崩壊により、豪雨が起こった際には川の下流で土砂災害が起きやすくなることも指摘されています。

3つ目はコミュニティやインフラの問題です。限界集落になっても人口がゼロにならない限りはそこで生活する人は存在し続けます。

そのために、電気・ガス・水道などのインフラ整備や集落の共同所有地の管理などが必要になります。

また、足の不自由なお年寄りや学校に通う子どもは、車がないためコミュニティバスなどの公共交通機関が必要になります。

しかし、これらのことを行うには行政のコストがかかるため、求められる水準全てを満たすことは難しく、限界集落の居住環境が著しく低下するとともにさらなる人口減少に拍車をかけてしまいます。

限界集落の原因

限界集落が生まれる原因は、限界集落から通える地域に、第一次産業以外の求人が少ないことや高校・大学が少ないことが挙げられます。
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限界集落の多くの基幹産業は農林業であり、限界集落で育った若者の多くは、農林業を継承しない限りは進学や就職で集落を離れてしまいます。

そして、そのまま市街地や都市部に定住してしまい、帰ってこないことが多いのです。

解決策としてのコミュニティビジネス

なかなか解決の難しい限界集落ですが、苦しい状況を乗り越えようと奮闘する地域が多く存在します。

様々な解決策がある中で、その解決策としてコミュニティビジネスによる解決方法とその事例を紹介します。

「吉田ふるさと村」

コミュニティビジネスの事例として島根県雲南市の「吉田ふるさと村」という会社をご紹介します。

吉田ふるさと村は、雲南市の旧吉田村にあたる地域にある会社で、村、農協、商工会と住民の共同出資による農産物加工の製造・販売会社です。吉田村の出身者が広島からUターンをして、起業しました。

吉田村の資源であるシイタケなどの農産物を加工して全国に販売し、その収益を吉田村のインフラ維持にあてています。

加工品販売の収益は、地域の交通の足であるコミュニティビジネスや水道整備などのお金にあてています。

また、加工品を販売するだけでなく、観光事業にも力をいれています。各地での販売イベントを通じて、吉田村のPRをするとともに、観光客誘致を行っています。

吉田ふるさと村では宿泊施設を持っており、観光客が宿泊することでさらに収益があがるという仕組みになっています。
>>吉田ふるさと村のHPはこちら

まとめ

限界集落問題は解決の難しい問題で、一部にはそのまま集落は消滅させて都市部に生活機能を移すべきという意見も存在します。

しかし、集落には固有の文化や自然、また都市部の住民にも影響を与える農林漁業の営みも存在します。

吉田ふるさと村のようなコミュニティビジネスの形で集落の地域資源を収益に変え、収益で地域のインフラを維持できると、限界集落の居住環境は向上していくでしょう。

限界集落での起業には政府や多くの地方自治体も補助金を出しています。今後、そのようなコミュニティビジネスによる起業も増えていきそうです。

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