みらいワークスでは、プロフェッショナル人材に特化したビジネスマッチングサービスおよび転職支援事業を行なっています。
起業家やフリーランスが活躍できるプラットフォームを作ることで、挑戦する人が増える社会インフラの創造に取り組んでおり、最終的には、すべての人がその時その時の価値観に応じた働き方を選択できるような社会を創っていくことを目指しています。
今回は「未来の働き方を創造する」みらいワークス代表の岡本祥治氏にお話を伺いました。
プロフィール
岡本 祥治 株式会社みらいワークス 代表取締役社長
2000年に慶應義塾大学理工学部を卒業後、アクセンチュア株式会社、ベンチャー企業を経て、47都道府県を旅する中で「日本を元気にしたい」という想いが強くなり、起業。
2012年にみらいワークスを設立。働き方改革の広がりやフリーランス需要の拡大とともに急成長し、2017年12月に東証マザーズへ上場。
趣味は読書、ゴルフ、焼肉、旅行(日本47都道府県・海外は80ヵ国渡航)。経済同友会会員、一般社団法人日本スタートアップ支援協会顧問。
みらいワークスが描く世界観
――みらいワークスで取り組まれている社会課題について教えて頂けますか。
岡本:みらいワークスを起業したきっかけにも関わる話になるのですが、私自身が11年前に起業して1人会社の社長となり、フリーランスで活動していた時期がありました。
その時に、日本は労働者を凄く保護する考え方や法律があるのに、起業家やフリーランスの方を保護するようなものが全くないなと感じました。
保護されないのは独立したので仕方がないことなのかもしれませんが、あまりにも格差が激しいと実感したのです。また、日本にはセカンドチャンスを与える考え方もありませんでした。
例えば、金融機関からお金を借りたのに会社を倒産させてしまった場合、連帯保証を社長が負っているので、破産するしかない状態になります。そして、破産してしまうともう二度と法人を作ることができません。
アメリカなどの他の国ではそのように失敗したとしても、もう一度挑戦できる機会が作られるような社会の仕組みになっています。しかし、日本はそうではありませんでした。
あまりにも起業家やフリーランスのような「挑戦しようとしている人」にとって日本は厳しい国であり、労働者という働き方のほうが守られているので、自然と労働者になることを選ぶ人が増えてしまう状況になっていると思います。
しかし、日本という国がこれからもっと成長していかなければならないことを考えたときに、もっと挑戦するような人が増えてくる国でないと日本は元気になっていかないと思います。
もっと挑戦するような人たちが増えていくようなインフラを創っていかなければならないのに、そのような社会インフラや法律が日本に存在しないことが最初の課題認識でした。
私がみらいワークスを起業したのは、その課題を解決しようとしている既存のプレーヤーがいないのであれば、自分で創ってしまおうと思ったことがきっかけです。
10年以上前に起業した時の自分と同じような状況に立たされて苦しんでいる人たちが世の中にたくさんいて、そういう人たちがもっと活躍できる社会を創ってあげたい、そのような想いで、起業家やフリーランス向けのプラットフォームを作ろうとしたことがみらいワークスの始まりでした。
私がみらいワークスを創業して最初に取り組みたいと思ったことは、そのような起業家やフリーランスがもっと挑戦できるような社会を創っていくことであり、それによって日本を元気にしていきたいということが我々の社会に対する課題認識というか変えていかなければならない社会の姿だと思っています。
そして今、そのような想いで事業に取り組んできた中で、次の課題が見えてきたフェーズになります。
その課題は、働き方やライフスタイルの選択肢が凄く狭い現状についてです。
それが何故起こっているかというと、新卒一括採用であたかもその会社で一生勤めなければならないような空気感のなかで、就職活動に取り組まなければならなくなっているからだと思います。
もちろん一部の人はそのような就職活動をしない人もいますが、世界的に見たら新卒一括採用というやり方はマイノリティで、終身雇用を前提とした雇用のあり方や価値観を刷り込むのは、これからの時代にはそぐわないのではないかと思っています。
働き方に対する柔軟性や選択肢を広げていくことが、「人生100年時代」と言われるこれからの社会においては重要です。
そこで、個人が人生設計やライフスタイルをどのようにするかを決めて、それに合わせた働き方を選択できるようにしなければならないと思います。
現在は、仕事を選んでそれに合ったライフスタイルを選択するようになっていると感じます。
本来であれば、人生でやりたいことやなりたい姿があって、そのなかに働くという選択肢が入っているはずなのですが、そうなっていません。
これを逆転させる必要があると思っています。そのために、個人が「自分はこのような人生を送りたい」と思った時に、それに合わせた多様な働き方を選択できるような社会のインフラが必要なのです。
我々は雇用される働き方だけではなく、独立起業も含めた多様な働き方をみらいワークスを利用することで選択できる社会インフラになることを目指しています。
そうすることで、様々な人々がその時その時の価値観に応じた働き方を選択できるような社会を創っていくことが我々の描く世界観です。
――元々は日本を活性化させて経済成長させたいという想いとそのような経済成長を担う起業家が活躍できる社会インフラが日本には整っていないという課題認識のもとで、事業を起こされて、取り組んでいく中で新たな課題が見えてきたということですね。
岡本:そうですね。働き始めたときに一生その会社が自分のことを守ってくれて、定年したあとの年金も含めて守ってくれるみたいな雰囲気を会社は醸し出していますけど、それが果たして本当なのかどうかということです。
その会社が40年、50年存続するかなど会社は何も保証してないのに、労働者に対しては従属性を求めています。20年ほど経った時に倒産したり、外資に買収されたりした時に「日本の社員は半分クビです」ということが起きてもおかしくありません。
そのような事態になったとしても困らないように、従業員の方々に対して啓蒙活動やスキルアップを会社としてはやらなければならないと思います。
しかし、正直そのような活動を日本の会社はサボっていて、その会社でしか通用しないスキルを一生懸命伸ばすことをやっています。それはあるべき姿とは言えないと私は思っています。
会社に勤めてから、10年、20年と経っていく中でもともと成長産業だった市場が成熟産業になることはよくあることです。
成熟産業から優秀な人材が次の成長産業に流れて行かなければなりませんが、その時に1つの会社でしか通用しないような人材では、他の業界に移ることはできません。
そのように時代とともにスキルを獲得して活躍できる人材を世の中に生み出そうとするならば、企業も変わっていかなければならないのです。
我々のようなサービスを社会インフラとして広げていくことによって、日本中の働き方に対する意識や価値観を変えていかなければならないと思います。
取り組みながら見つけたビジネスモデル
――途中のお話にも少しあがっていましたが、みらいワークスを起業されたきっかけについて具体的に教えて頂けますか。
岡本:実は、元々起業しようと思っていたわけではなく、20代の頃は全く起業する気がありませんでした。
新卒では、自分のやりたいことが見つかっていなかったので、やりたいことを見つけたいと思い、短期間でスキルが上がって様々な業界が見られる外資系のコンサルティングファームに入りました。
ところが、働いていても全くやりたいことが見つかりませんでした。気づいたら30歳手前になっていて、どうしようかと思ったときに、日本人なのでまずは日本のことを知ってみようと思って47都道府県を全て回ってみました。
私は神奈川県出身で、そこまで田舎の方に行ったことがなかったのですが、東北や四国、九州などは田舎に行けば行くほど、人や文化、食、歴史など素晴らしいものがたくさんありました。
しかし、経済的にはどんどん活力を失っている地方の現状を見たときに、日本の素晴らしい部分が消えていってしまうのではないかという感覚を得ました。
その時に、自分が日本をもっと元気にできることをやりたいなと思いました。そこで、日本を元気にできるような事業をやっている会社に転職しようと思ったのですが、そのような会社はありませんでした。自分の想いを形にするには起業するしかないのだと思って起業することにしたのです。
このような経緯で起業したのですが、日本を元気にするということが決まっているだけで、どのようなビジネスをするかは決まっていませんでした。
なので、コンサルタントとしての経験を活かしてフリーのコンサルタントとして活動しながら、やりたいことを見つけていくことにしました。フリーランスとしてお金を稼いで、そのキャッシュを使って事業を立ち上げて、ダメになったらまたフリーで働くことを繰り返していたのです。
そしてちょうどその時に、リーマンショックがきて景気が最悪になりました。仕事がほとんど無くなりましたが、比較的営業が上手かったこともあり、徐々に仕事が取れるようになりました。
しかし、周りの起業家やフリーランス仲間は仕事が無くなってしまった人ばかりで結構大変でしたね。
そのような状況を受けて、自分で取ってきた仕事を周りの人に依頼するようになっていきました。
それが今のみらいワークスの事業の原型になっています。自分がコンサルタントとしてお客さんにサービスを提供して、お客さんから「ありがとう」と言われるのは当然嬉しいのですが、それ以上に周りの人が仕事が無くて困っている中で、その人たちに仕事を紹介して「本当に助かったありがとう」と言われる方が嬉しいと感じたのです。
自分の気持ち的には、誰かに機会を提供するほうが性に合っていると思うようになって、それをビジネスにしようと思いました。
また、やり始めているうちに気づいたのですが、起業や独立する方は元々凄く高い志を持って起業や独立する人が多いのです。
特に、地方創生、中小企業支援、海外進出支援をしたいと考えている人が多く、それはどれをとっても日本を元気にする仕事だと思いました。
要は自分と同じように日本を元気にしたいと思って起業する人がたくさんいたのです。
ただ、その人たちが生活に苦しんでいたり、本来やりたいことができていない現実を見たときに、この人たちが本来やりたいことができるようになれば、自分一人の事業で日本を元気にするために頑張らなくても、周りの人が日本を元気にしようと思って活動し、それが日本を元気にできる事業になると考えたのです。
自分が本来やりたかった「日本を元気にする事業」と、その際やっていたビジネスが重なったタイミングでもありました。
そして、これは社会的にも意味がある事業であり、国がやらないのであれば自分でやるしかないと思って、みらいワークスを創業しました。
個人が活躍できるためのプラットフォーム
――ご自身で仕事を取ってきて、それを他の人に紹介する機会が偶然生じて、それを大きなプラットフォームにすれば自分が本来やりたかった「日本を元気にする」事業に繋がると、取り組んでいく中で気付かれたことがみらいワークス創業のきっかけだったのですね。
具体的にはどのような事業を行っているのでしょうか。
岡本:みらいワークスでは、お客様から業務委託として仕事を受けて、その仕事を起業家やフリーランスの方に再発注するモデルで事業を行っています。
お客様からの業務委託料に対して手数料を引いたものをフリーランスの方や起業家の方にお支払いすることで、収益化しています。
<みらいワークスのビジネスモデルイメージ>
そのモデルに加えて、起業家やフリーランスの方には再就職したいというケースが結構ありまして、その方々の再就職の支援も行っています。
基本的には「プロ人材」と言われる層の方々が多様な働き方を選択するにあたって、何でも揃っている会社を目指して事業を展開しています。
そのビジョンの中で、現在は業務委託のモデルに特化して、起業家やフリーランスの方にプロジェクトを介することによって、働き方の選択肢を増やすことができる事業を行っています。
――「プロ人材」というと一般的な副業・フリーランスのマッチングサービスとはターゲットが違うということでしょうか。
岡本:そうですね。一般的なクラウドソーシングのサービスですと、平均の月の報酬が3~4万円ほどになる仕事内容が多いです。
我々のサービスでは、月100万円以上の報酬が得られる仕事内容になっているので、それだけプロジェクトのレベルは高いです。高度プロフェッショナル向けのプラットフォームになっています。
――クラウドソーシングのサービスではそのように単価を高く保つ仕組みが重要ですよね。
岡本:そうですね。クラウドソーシング系のサービスでは品質保証を行う仕組みが重要です。
我々は自分たちで業務を受けるやり方をしているので、品質の保証ができます。
だから、お客様から高い単価を保って受注をし、個人の人たちに還元できるような仕組みになっています。
ただ、おっしゃる通りでして、フリーランスの方々の報酬が減るようなプラットフォームが結構存在していて、個人がもっと活躍できるような社会を創る必要があると考えています。
それを実現できる仕組みを我々プラットフォーマーは構築していかなければなりません。
――これまでの事業運営を通して大変だったことや嬉しかった経験にはどのようなことがありますか。
岡本:大変なことはたくさんあります。人材ビジネスなので、人と折り合いがつかなくなることも経験しました。
人の目利きは非常に難しく、初めて弊社を通して仕事をして頂いた登録者の方やクライアントの方とは、スムーズに行かないケースもありました。その際、迷惑をかけてしまった登録者の方やクライアントの方への信頼回復は大変だと感じます。
一方で良かったことも、人絡みのところになります。
例えば、一緒にプロジェクトに入っていた二人が意気投合して一緒に会社を始めて上手くいっているケースがあります。
あとは、FinTechの会社に入っていた人がFinTech業界が面白いと言って自分でFinTechのベンチャーを立ち上げて成功しているケースもあります。
そのように「次のきっかけ」を提供できたことがわかったときは凄く嬉しいですね。
誰かのため、社会のために行動している人には必ず誰かが手を差し伸べてくれる
――大変なことのほうが多いと思いますが、自分のサービスの価値を実感する瞬間があるからこそ頑張れるのですね。
最後にみらいワークスの今後の展望とメッセージをお願いします。
岡本:今後の展望として、我々がビジョンとして掲げている「プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する」の達成に向けたアクションを起こして行きます。
現状、我々や日本自体が多様な働き方の可能性を十分示せているかというと、そうではありません。
早くあらゆる人が多様な働き方を選択できて、自分が本当に歩みたいと思った人生を歩んでいける社会を創っていきたいと思います。
「みらいワークス」という社名の通りですが、「未来の働き方」を我々で創っていきたいですね。
メッセージとしては、「想いがあるならとにかく行動に移して欲しい」ということです。
私が起業した当初は、貯金が30万円で法人を作るのに20万円かかってしまい、10万円しか残っていないような状態で走り出しました。
それでも走り出したら何とかなるものです。誰かが手を差し伸べてくれますし、行動する勇気さえあれば基本的には何でも始められると思います。
一つ大切なのは、自分のために仕事をする人に対しては手を差し伸べてもらえませんが、誰かのためとか社会のために行動している人には、やはり誰かが手を差し伸べてくれると思います。
そして、どのような社会課題に取り組むかに関しては、「原体験」が大切だと思います。
自分が経験したことに対して、想いを持ってやることが重要です。
どんな人でも人生において何らかの形で社会課題を感じているはずです。それを無視するか、自分の課題だと思って主体的に取り組むかで「挑戦する人になるか、ならないか」が決まると思います。
社会課題に対して何かアクションを起こしたいという志があるのであれば、誰かが助けてくれるはずなので、大切なことは自分で一歩を踏み出すこと、それさえできれば多くの人が社会課題を解決できる人になっていけると思います。