テーブルクロスのアプリから飲食店の予約をすると、その予約人数分の給食が提携するNPOを通して、途上国のこどもたちに届けられるという仕組みで社会貢献ができるグルメアプリを運営する株式会社テーブルクロスの齋藤真愛氏に社会課題を解決するために必要な「持続的な仕組みづくり」の重要性や社会貢献に対する意識改革・文化づくりの大切さについて伺いました。
プロフィール
齋藤 真愛 株式会社テーブルクロス
1986年福島県いわき市生まれ。
高校を卒業と共に、某美術大学進学の為東京へ上京。前職は7年間大手保険会社で営業を経験。「死」「病気」「がん」などのキーワードを使い営業していくことに疑問を抱き、これから未来のある「子ども」にフォーカスした仕事がしたいと思っているときに「テーブルクロス」に出会う。
現在は東京エリアマネージャーとして、飲食店など「チャリティ予約」の文化を広げるために活動中。
現場に行き、実際に試すことで「真の課題」が見えてくる
――テーブルクロスではどのような人々を助けて、その人々はどのような課題を抱えているのでしょうか。
齋藤:弊社では途上国のこどもたちの給食支援を行っております。途上国のこどもたちには学校に行きたくても行けないだとか、生きていくためには働かなければならないという理由で、なかなか学校に行けないという課題があります。
給食支援を実際に行うと、こどもたちはご飯が食べたくて学校に集まって来てくれます。そこで例えば、字を読むことって大事なんだとか、ご飯を食べる前に手を洗わなければいけないんだとか、学校ってこんなに楽しいんだとか、そういったことをこどもたちがご飯を食べにくることでわかってくれます。
そのように学校に行きたいと思ってもらえることが、ゆくゆくは教育支援などに繋がる大事な活動だと思って取り組んでいます。
――途上国のこどもたちというと教育支援のイメージが強いのですが、給食支援を行われのは、教育よりももっと先に健康の面をサポートしたほうが、よりその人たちの根本的な課題に寄り添っている思われたからなのでしょうか。
齋藤:そうですね。やはり食べることは生きることに繋がりますので、死んでしまう前にしっかりご飯を食べて栄養を取ってもらって生きていくことが一番の課題ではないかなと思いました。もちろん他にもいろんな課題があるんですけれども、給食支援を優先的に行うことにしています。
――そのような途上国のこどもたちの課題は、日本にいると気づきづらいですし、正直関係ないようにも思えてしまう課題だと思うのですが、なぜテーブルクロスでは途上国のこどもたちの課題解決に取り組もうと思われたのでしょうか。
齋藤:弊社の代表である城宝が小さいころに途上国に行って、自分と同じぐらいの年代のこどもたちが学校へも行かずにゴミを拾っていたりだとか、物を一生懸命に観光客に売ったりだとか、そういう姿を目の当たりにした経験があります。
国が違うだけでこどもたちって働かなければならなくて、学校にもいけないんだということに気づき、小さい頃からボランティア活動を始めていたのですが、そういったこどもたちを何とかしてあげたいという気持ちが10年近くにわたって、今のテーブルクロスというかたちになりました。
私のほうは途中からジョインしたのですが、テーブルクロスの「継続して支援し続ける仕組み」に凄く興味をもったことがきっかけです。
あとは日本人って結構多くの方が1000円を寄付したときにその1000円「すべてが寄付に回らないと嫌だと考える人」や「使い道が知りたいと思う人」が多いと思っています。
でもそうではなくて、支援する人の給料だとか移動費などがあるので、1000円のなかの一部が寄付に回ればいいというのが世界では一般的な「寄付のお金の使い道」の考え方だと城宝が教えてくれて、面白いかもと思ってジョインしたのがきっかけでもありました。
社会貢献するには、まず自分の幸せから
――確かに、そういう「使い道などの意識」は日本人が持ち合わせていない観点なのかもしれませんね。
また、テーブルクロスでは社会貢献することが当たり前の社会を目指されていると思うのですが、まだまだそのような文化は根付いていないのかなとも思います。私もそうなのですが、自分の周りだけに目がいってしまいがちで、あまり寄付や社会貢献といった活動に手が伸ばせていないと感じています。
そういったところは日本でソーシャルビジネスをするときに壁になったりするところかもしれないと思うのですが。
齋藤:そうですね。よく言われるのが、せっかく良いボランティア活動をされているのに、そういった方達が「収入的に恵まれていない」ことがあります。
あとは私もそうなんですけれども、こどもがいると、途上国のこどもと自分のこどものどちらが優先かとなると、やはり自分のこどもが優先となってしまいます。
すると、自分のこどもに何かあったときにボランティアの活動もやめなければいけない状況になってしまうと思います。
ですので、「自分の幸せを基盤に作って」いないと社会貢献やボランティア活動ができなくなってしまうんですよね。
私たちはそういう考えで事業運営を行っているので、頂いたお金の中の一部を給料としてちゃんと頂いるんですけれども、そのおかげで自分のこどものこともきちんとしながら、途上国のこどもたちの支援が率先してできるありがたい状況になっています。
社会貢献と利益を「両立」するテーブルクロスの仕組み
――そのように、株式会社でありながら持続的に途上国のこどもたちを支援できる秘訣は、良いビジネスモデルの存在があるからではないかと思います。
テーブルクロスのビジネスモデルについて具体的に教えて頂けますか。
齋藤:テーブルクロスは社会貢献ができるグルメアプリで、スマホのアプリを運営している会社になります。
どういうアプリかというと飲食店のグルメ広告になるのですが、食べログさんやホットペッパーグルメさんなどと同じように飲食店を検索して、そこから予約をしてご飯を食べに行くアプリです。
「飲食店様のメリット」として、成果報酬型で広告料を頂いています。
よく大手の広告媒体では店舗情報を掲載するのに、初期費用がかかったりクーポンを発行するのに課金が必要だったりとお客様の予約が成立する前に費用がかかるモデルになっています。
弊社では、お客様が来店してからお会計時の人数に対して、広告料を設定しているので飲食店様は確実に広告掲載からの売り上げが上がってから弊社に広告料を払えばいいモデルになっているため、デメリットがありません。
そして、その売り上げの一部をNPO法人様を通して途上国のこどもたちに給食支援をしているかたちになっています。
途上国のこどもたちからは飲食店様に向けて、例えば「ありがとう」などのメッセージを送って頂いております。
――ユーザー側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
齋藤:アプリのユーザーさんは、アプリ内に「エンジェルカウンター」というものがあります。それは、自分が何食給食支援をしたかというカウンターになっていて、予約人数分の給食支援ができる仕組みになっています。例えば4人で予約した場合、4食分送りましたよということがわかるようになっています。
そのように自分の予約という「何気ない普段の行動」が、こどもたちの給食につながることがユーザーさんの価値につながっていると思います。私達はこれを「チャリティ予約」と呼んで、日本の新たな寄付文化にしていきたいと思っています。
<テーブルクロスのサービスイメージ>
――社会貢献に重きを置いているビジネスを持続的に行っていくのは難しいことだと思います。各ステークホルダーのメリットを明確にして、持続的に途上国のこどもたちを支援できるようにした素晴らしいビジネスモデルですね。
そのようにテーブルクロスを運営するなかで、困難や嬉しかった経験にはどんなものがあったか教えて頂けますでしょうか。
齋藤:よく弊社が社会貢献したい会社なのか、社会貢献を理由にお金を儲けたい会社なのかと言われることがあります。
弊社は社会貢献だけしたい会社でもなく、社会貢献という言葉を見せものにしてお金儲けをしたい会社でもないんですよね。
「社会貢献と利益の創造の両方を成し遂げたい」と思っている会社なんです。社会貢献をするためには、継続して売り上げを上げていかないことには給食支援ができないので、売り上げを伸ばしていかなければならないと思っております。
そうしなければ、私たちが成し遂げたい社会課題の解決ができなくなってしまいます。
しかし、先ほども話題にあがったような「日本の社会貢献に対する意識」の中では、儲かってから一部寄付すればいいじゃないかとか、社会貢献と言いながらどうせ全部ポケットマネーに入っちゃうんでしょというような考えがあるので、それに対して利益を生みながらずっとその一部を寄付し続ける仕組みがなかったら、社会課題は解決できないということを伝えていくのが難しいなと感じています。
例えば飲食店様からですと、「なんで途上国のこどもたちなのか」とか、「そんなところまで手が回らない」などの意見を頂くこともまだまだあるので、そういった中でテーブルクロスを使って頂くことのメリットを伝えるのはなかなか難しいなと思っています。
嬉しかった経験ですと、最近ようやくきちんとした額で毎月途上国のこどもたちに寄付できるようになってきたので、途上国のこどもたちから「ありがとう」などのメッセージや映像が届くとやはり嬉しいですし、やっていて良かったなと凄く感じます。
「持続的な仕組み」づくりと「社会貢献の文化」を日本に広めることがミッション
――やはりこのような活動は大変なことのほうが多いと思うのですが、そういう瞬間があるからこそ頑張れるのだと思います。
最後にテーブルクロスの今後の展望や社会課題の解決に取り組みたいと思っている人々にメッセージをお願いします。
齋藤:今は飲食店の広告媒体だけで、予約がチャリティに繋がる仕組みで動いているんですけれども、いずれは他の予約でもチャリティに繋がる仕組みをどんどん創っていきたいと思っています。
航空券の予約やホテルの予約など、様々なところでできる可能性があると思っています。
あとはもっとテーブルクロスのことを皆さんに知って頂いて、応援したいと思ってもらえるようになりたいですね。
毎回の予約までとは言いませんが、半年に一回の予約などテーブルクロスを通して予約して頂くことで、それが誰かの笑顔に繋がることを皆さんに体感して頂きたいなと思います。
メッセージとしては、一回きりの寄付やイベントなどで社会課題を解決することはできないので、「継続して取り組みや支援ができる仕組み」を生み出すことが大切だとお伝えしたいです。
ですので、「継続して支援し続ける仕組み」で、なおかつ「自分のことを幸せにしながら行える仕組み」を弊社の真似でも全く構わないので、考えてみてほしいと思います。
そのような仕組みづくりを皆で力を入れてやっていけたら、様々な社会課題が解決できるのではないかと思います。
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