AoI Company 奥村氏インタビュー「産後の母親たちが安心して子育てできる社会を創る」

AoI Companyでは、産後の不安や孤立に苦しむ母親のケアをするために「ママっぷ(https://mamap.family/)」というサービスを展開しています。

「ママっぷ」は、医療者と子育てに関するLINE相談や自分に合った助産院を検索でき、産後の母親を孤立や不安から解放することを目指しています。

今回は産後の孤立や産後うつの課題に取り組むAoI Company代表の奥村葵氏にお話を伺いました。
奥村葵 ママっぷ 産後うつ 社会起業家

プロフィール

奥村 葵 AoI Company 代表/向日葵助産院院長

2005年 看護師国家試験取得 循環器内科看護師・産婦人科看護師
2012年 助産師国家試験取得 産婦人科病棟勤務
2014年 産業能率大学現代マネジメント学科卒業 
2017年 AoI Company創業
2018年 SBI大学院大学アントレプレナー専攻卒業/MBA取得 向日葵助産院設立

『2030年までに児童虐待死亡数ゼロ』を目指し活動中。
病院の他に、産後ケア宿泊施設・電話相談サービス・ナーシングドゥーラによる産後訪問において産後のケアを学ぶ。

2017年・2018年、LINE相談事業において「九州大学ビジネスプランコンテストQAN賞」「地域クラウド交流会優勝」「Tokyo Startup Gatewayセミファイナリスト」を受賞。
医療者スタッフ17名、エンジニア2名とともに産後サービスの開発中。

現在、医療スタッフによるLINE相談を行なっており、今後ママと医療者のマッチングサイトを計画中。ネット上でも産後ケアは可能であることを実感し、バーチャル助産院の構築を目指している。

AoI Companyが取り組む産後の母親の課題

ーーAoI Companyで取り組まれている社会課題について教えて下さい。

奥村:AoI Companyではママたちの産後の孤立という課題と潜在医療者の活用に取り組んでいます。

ママたちの産後の孤立に関しては現在、日本の50%とのママがマタニティブルーになると言われていて、さらに9%は産後うつになってしまう現状があります。

ママたちは妊娠してから、つわりや体調の大きな変化、さらに出産という命を懸けた人生の一大イベントを乗りきることで、頭の中がいっぱいです。

ところが、無事に出産を終えたと思った瞬間から、心身の状態を整える時間もなく、子育てがスタートします。

近くに頼れる家族や親戚がいないなか、理想通りにいかない子育てに、不安な気持ちでいっぱいになってきてしまうのです。

このような背景から多くの新米ママたちが産後に孤立したり、うつになったりしてしまいます。

AoI Companyでは、そのようなママたちの産後の孤立の課題を医療者とLINE相談できるサービスによって解決しようとしています。
奥村葵 社会起業家 AoI Company
また、相談相手として稼働してくれている医療者は潜在医療者に該当する方々です。

潜在医療者とは、医療資格は持っているけれども、何らかの理由で働くことができていない医療者です。

看護師や助産師は離職率が高く、全国で71万人の潜在医療者がいると言われています。

特に看護師で働いてこられた方は、人の役に立ちたいと思っている方が多いです。お子さんなどができて、病院では働けなくなってしまったけれども、自宅で出来るのであれば、自己実現したいと感じている方が多くいます。

そのような方々が自宅でも、これまでの経験を活かして自己実現できる場所として、LINE相談を通して多くのママたちをサポートしてくださっています。

LINE相談によってこれまでは自分に合っているかもわからないネットの情報を頼りにしていたママたちが、直接医療者に聞くことができます。

さらにLINEで友達に話すように気軽に相談できることで、ママの孤立や不安を解消し、うつに陥る前に予防できるのではないかと思っています。

原体験だけではない、本質的な性格も課題認識に繋がる

ーー利用者のママたち、相談相手となる医療者、両者にとって良いサービスだと思います。

どうして産後うつの課題に取り組もうと思われたのでしょうか。

奥村:私は幼稚園の頃から看護師になりたいと思っていて、他の職業など考えずに看護師になりました。

最初は循環器内科という心臓関連の科にいて、患者さんは主に高齢者の方々です。

勤めて3年ほど経った時に、ちょうどニュースで幼児の虐待が明るみになって盛んに取り上げられるようになりました。

児童が死亡してしまうニュースをたくさん見て、憤りというか強い疑念を感じたのです。

おそらく、私が幼少の頃に母子寮に住んでいて、ネグレクトなどの虐待を間近で見てきたという潜在的な意識が、当時、虐待というワードを意識する引き金になったんだと思います。

せっかく命を懸けて生んだ子どもをどうして虐待してしまうのかと、児童虐待なんて絶対にあってはいけないと感じました。

そこから関心を抱いて、産婦人科に転科することにしたのです。

最初は看護師として寿命と共に亡くなってしまう方々が亡くなる前に、生きてて良かったと思えるようにサポートすることを目指していたのですが、同じ尊い命でも生まれてきたばかりの子たちの命をなんとかしたいと思ったからです。

そして、出産するときにママたちが良い出産をできれば虐待がなくなるのではないかと思って産婦人科に行きました。

しかし、産婦人科に勤めてから、良い出産をしても産後に上手くいかなければ、虐待に繋がってしまうかもしれないと気づいたのです。

産後のママたちはホルモンが変調して、常に徹夜をしているような不安定な状態が続きます。そのような状態で、毎日不安だらけの子育てをしなければならないのです。

もしそれが虐待などに繋がってしまうのであれば、産後のママたちが不安や悩みなく子育てできるような環境を創りたいと思いました。
社会起業家 奥村葵 インタビュー
その気持ちをとにかく発信して何かしたいと思ったので、病院を一度辞めて大学に行くことにしたのです。

大学で経営などの勉強をして、産後の環境をよくするための仕組みをゼミで考えて、卒業しました。

卒業してから病院に戻って、私が考えた仕組みを提案してみたのですが、その声は小さく実現できそうになかったです。

病院で働くのは好きでしたが、自分が思っていることを何とか実現したいと思って、今度は大学院に行きました。

大学院で現在のサービスのインサイト調査やビジネスコンテストに出させてもらっことが現在に繋がっています。

産後に伴奏して寄り添ってくれるような人がいれば、おそらく虐待はなくなるのではないかという仮説を見つけて、サービスを作りました。

AoI Companyのサービス「ママっぷ」

ーー具体的にはどのようにサービスを運営されているのでしょうか。

奥村:現在は「ママっぷ」というサービスを展開しています。 

サービス名にはママのヘルプとママのマップがかかっています。

ママのヘルプに関しては、オウンドメディアと医療者とのLINE相談が軸になります。

オウンドメディアにママたちが必要としているコンテンツを掲載して、記事を読みながらわからないことがあればLINE相談できる流れを作っています。

記事コンテンツは保健師や看護師など100%医療者が作るので、安心してご利用頂けることが外部の記事と差別化できるポイントだと思います。

また、ママのマップに関しては、助産院と授乳ケアができる場所のマップの提供を目指しています。

助産院は出産から産後のケアまで何でも頼れる場所で、全国に600か所以上あります。

これまでは○○助産院とピンポイントで検索しないと出てこなくて、リーチしづらい課題がありました。

そこで、口コミなども含めて助産院や、産後の相談が気軽にできる場所の見える化を実現させます。

「ママっぷ」を通して、オフラインでもオンラインでもママたちを孤立から救える場所を提供しています。

「自分がやりたいこと」×「顧客が求めるもの」の追求

ーー運営している中で嬉しかったことにはどのようなことがありますか。

奥村:嬉しいことは、ビジョンに共感して様々な人が手を挙げて支えてくれることです。

現在、メンバーで支えてくれている人たちは元から繋がりがあった人たちではなく、私がAoI Companyを始めてから出会った人たちです。

ビジョンに共感し、見返りなんていらないからという気持ちで手伝ってくださっています。

本当に私は人に恵まれているなと実感しますね。

ーー今後の展望と社会起業家になる人へのメッセージをお願いします。

奥村:今後もママたちが信頼して使えるサービスやコンテンツを提供したいと思うので、ママっぷのコンテンツをより充実させていきたいと思っています。

また、今後は様々な企業と提携して成長していく1年にもしたいですね。
社会起業家 奥村葵 インタビュー
メッセージとしては、サービスを作る時に、自分がやりたいことと顧客が望んでいることは違うことがあると意識してほしいです。

ですから、サービスを作る前に、自分が解決したい課題を抱えている人たちが本当に望んでいるか、インサイト調査をしっかりとしてください。

本当に望まれていることで、自分がやりたいことであれば、それがあなたのやるべきことになると思います。

私も最初はママたちのために出産から産後まであらゆるサポートができる複合施設を作りたいと思っていました。しかし、実際に調査してみるとLINE相談のほうがいいとわかりました。

自分が臨床にいたときから複合施設が作りたい思っていたのですが、その思いと本当に困っているひとたちが欲しいものは違ったのです。

顧客に求められていないものに向かって走っても無駄な時間になってしまうので、しっかりインサイト調査して、ターゲットの人の本当の声を聞いてください。

プロボノ・お手伝い問い合わせフォーム

最新情報をチェックしよう!
>

社会のお困りごと、

課題を教えて下さい