地球上の生物は40億年という長い歴史の中で、様々な環境に適応して進化し、現在は3,000万種とも推定される多様な生物が生まれています。これらの生物は全て直接・間接的に支えあって生きています。
このような生物多様性は人間の生活に欠かせないエコシステムですが、人間の活動によって危機に晒されている現状があります。ここでは生物多様性の問題について紹介します。
生物多様性とは
環境省の定義によると生物多様性とは「生きものたちの豊かな個性とつながり」とされています。
1992年に国連で採択された生物多様性条約によると、生物多様性には以下の3つのレベルの多様性があると考えられています。
生態系の多様性
森林、里地里山、河川、湿原、干潟、サンゴ礁など様々なタイプの自然。
種の多様性
動植物から細菌などの微生物にいたるまで、様々な生きもの。
遺伝子の多様性
同じ種でも異なる遺伝子を持つことにより、形や模様、生態などに多様な個性を持つこと。
生物多様性の重要性
私たちは呼吸する空気、飲む水、食べる物、医薬品などをはじめ、様々な生物多様性の恵みを受け取っています。<環境省 生物多様性HPより>
普段の生活では認識していない多くの生物や自然が私たちの暮らしや命を支えているのです。
生物多様性の問題
私たちの生活に欠かせない生物多様性ですが、日本の生物多様性は4つの危機にさらされていると考えらます。
歴史的には自然現象などの影響で大量絶滅が起きていますが、現在は第6の大量絶滅の時代だと呼ばれています。
4つの危機とは人間の活動による影響が主な原因であり、地球上の種の絶滅のスピードは自然状態の約100~1,000倍にも達しており、多くの生物が危機にあります。
第1の危機「開発や乱獲による種の減少・絶滅、生息・生育地の減少」
鑑賞や商業利用のための乱獲・過剰な採取や埋め立てなどの開発によって生息環境を悪化・破壊するなど、人間活動が自然に与える影響です。
第2の危機「里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下」
二次林や採草地が利用されなくなったことで生態系のバランスが崩れ、里地里山の動植物が絶滅の危機にさらされています。また、シカやイノシシなどの個体数増加も地域の生態系に大きな影響を与えています。
第3の危機「外来種などの持ち込みによる生態系のかく乱」
外来種が在来種を捕食したり、生息場所を奪ったり、交雑して遺伝的な攪乱をもたらしたりしています。また、化学物質の中には動植物への毒性をもつものがあり、それらが生態系に影響を与えています。
第4の危機「地球環境の変化による危機」
地球温暖化は国境を越えた大きな課題です。平均気温が1.5~2.5度上がると、氷が溶け出す時期が早まったり、高山帯が縮小されたり、海面温度が上昇したりすることによって、動植物の20~30%は絶滅のリスクが高まるといわれています。
解決への取り組み
生物多様性を身近にするいきものコレクションアプリ「バイオーム」
「バイオーム」はポケモンGOのようなコレクションゲーム性に現実世界の生き物を組み合わせたアプリです。
ユーザーは、アプリを通じて見つけた生き物を写真で記録し、コレクションすることができます。撮影をするだけでなく、生き物の名前を判定する機能もついています。
投稿されたデータは保全活動に活用され、ユーザーが生き物を身近に感じながら、保全活動が行えるアプリになっています。<株式会社バイオームHPより>
生物多様性という全体感を捉えづらい問題にとってはユニークなアプローチと言えるでしょう。
まとめ
私たちが呼吸する空気、私たちが飲む水、私たちが食べる物、多くを生物多様性が支えています。
生物多様性とそれが支えている生態系は、気候変動の緩和を助け、災害リスク軽減の基礎にもなります。
また、自然はレクリエーションや精神的な幸福にとっても重要です。私たちが生きる上で欠かせない生物多様性の保全のために具体的な取り組み必要です。
参考サイト
環境省 生物多様性(http://www.biodic.go.jp/)
環境省 生物多様性センター(http://www.biodic.go.jp/biolaw/jo_hon.html)