SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、持続可能な世界を実現するための17の目標と169のターゲットから構成されており、2015年9月の国連サミットで193の国連加盟国の合意によって採択された2016年から2030年までの国際目標です。
ここでは、目標12の「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」について解説します。
目標12:「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」
持続可能な消費と生産には、資源効率の改善と省エネの推進、持続可能なインフラのほか、すべての人に基本的なサービス、環境にやさしく、やりがいのある仕事、生活の質的向上を提供することが関わってきます。
これを実現すれば、全般的な開発計画の達成、将来的な経済・環境・社会コストの削減、経済的競争力の強化、さらには貧困の削減に役立ちます。
持続可能な消費と生産は、「より少ないもので、より大きな、より良い成果を上げる」ことを目指します。
ライフサイクル全体を通じて生活の質を改善する一方、資源利用を減らし、地球の劣化を緩和し、汚染を少なくすることで、経済活動から得られる利益を増やします。
また、生産者から最終消費者に至るまで、サプライ・チェーンにおける体系的なアプローチとアクター間の協力も必要になってきます。
そのためには、持続可能な消費とライフスタイルに関する啓発と教育を通じた消費者への働きかけ、基準や表示を通じた消費者への十分な情報提供、持続可能な公的調達に向けた取り組みなども行わなければなりません。(※1)
目標12のターゲット
目標12におけるターゲットは下記の11項目です。
12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する 10 年計 画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。
12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.8 2030 年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。
資源の現状
目標12の「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に対する具体的な成果指標として11のターゲットを紹介しました。
これらのターゲットを達成するには、現状とのギャップを知り、そのギャップを埋めるためのアクションが必要となります。以下は資源の現状を表すデータです。
・2050年までに世界の人口が96億人に達すると、現在のライフスタイルを維持するために必要な天然資源を提供するためには、およそ地球3つ分が必要になる。
・世界の250の大企業の93%が現在、サステナビリティについて報告している。
水資源の現状
・世界の水の3%未満が新鮮であり(飲める)、そのうちの2.5%は南極、北極、氷河で凍結されている。 よって、人類は人間の生態系と飲料水需要のすべてを残りの0.5%に頼らなければならない。
・人類は汚染された川や湖の水を自然よりも早く再循環し浄化することができる。
・10億人以上の人々が依然として新鮮な水を利用することはできない。
・水は自然から無料で得られるが、水を供給するために必要なインフラは高価である。
エネルギー資源の現状
・世界中の人々がエネルギー効率のよい電球に切り替えた場合、年間1,200億米ドルの節約になります。
・技術進歩によってエネルギー効率が向上したにもかかわらず、OECD諸国のエネルギー使用は2020年までにさらに35%増加すると推定されている。
・世界のエネルギー使用用途のシェアでは商業用エネルギーと居住用エネルギーの使用が1番の用途である輸送についで、世界で2番目となっており急速に拡大している分野である。
・2002年時点でOECD諸国の自動車在庫は550百万台(うち75%は個人のもの)であった。2020年までに自動車所有が32%増加すると推定されている。 同時に、世界で自動車の走行距離は40%増加すると予測され、航空旅行は同時期に3倍になると予測されている。
・家庭では世界のエネルギーの29%が消費されており、その結果、CO2排出量の21%を占めている。
・最終エネルギー消費における再生可能エネルギーの割合は、2015年に17.5%に達している。
食糧資源の現状
・生産段階(農業、食品加工)では食糧からの環境への大きな影響が生じている一方で、家計は食事の選択や習慣によって環境に影響を与えている。 その結果、食品関連のエネルギー消費と廃棄物の発生によって環境に影響を与えている。
・毎年、生産された食糧の1/3が(13億トン、1兆ドルに相当)、消費者や小売業者の間で腐敗したり、運送や収穫の実態が悪いために廃棄されたりしている。
・世界の20億人が肥満である。
・土地の劣化、土壌肥沃度の低下、持続不可能な水の使用、過剰漁獲および海洋環境の劣化はすべて、天然資源を基本とする食料供給能力を低下させる。
・食料部門は、世界の総エネルギー消費量の約30%を占め、温室効果ガス総排出量の約22%を占めている。
まとめ
資源の持続可能性や温室効果ガス排出などの環境負荷は個人や一企業単位で見ると影響が小さく感じられ、個人として危機感や当事者意識を持ちづらい難しい問題です。
しかし、データを見る限り一人一人が意識改革をすれば、全体としては大きな改善が見られることが想定されます。
一人一人が長期的な視点を持って、自分たちの暮らす地球を豊かで持続可能なものにするという意識重要です。
※1 目標12の概要文は国際連合広報センターHPより引用
参考サイト
・国連HP
・外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダ」