SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、持続可能な世界を実現するための17の目標と169のターゲットから構成されており、2015年9月の国連サミットで193の国連加盟国の合意によって採択された2016年から2030年までの国際目標です。
ここでは、目標14の「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」について解説します。
目標14:「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」
世界の海洋は、その温度、化学的性質、海流、生物を通じ、地球を人間にとって住みよい場所にする地球規模のシステムを動かしています。
雨水や飲み水、気象、気候、海岸線、私たちの食料の多く、さらには私たちが吸っている大気中の酸素でさえ、究極的には海洋によって提供、制御されています。
海洋は歴史全体を通じ、貿易や輸送に不可欠な経路にもなってきました。
この地球にとって必須の資源を慎重に管理することは、持続可能な未来の重要な要素となります。(※1)
目標14のターゲット
目標14におけるターゲットは下記の10項目です。
14.1 2025 年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.2 2020 年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.3 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020 年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.5 2020 年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の 10 パーセントを保全する。
14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020 年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。
14.7 2030 年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.a 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14.b 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
14.c 「我々の求める未来」のパラ 158 において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。
海洋及び海洋資源の現状
目標14の「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」に対する具体的な成果指標として10のターゲットを紹介しました。
これらのターゲットを達成するには、現状とのギャップを知り、そのギャップを埋めるためのアクションが必要となります。以下は海洋及び海洋資源の現状を表すデータです。
・海洋は地球の表面の3/4を覆い、地球に存在する水の97%を占めている。
・30億人以上の人々が、生計のために海洋および沿岸の生物多様性に依存している。
・海洋および海岸資源や産業の市場価値は、世界全体で年間3兆ドルであり、世界のGDPの約5%と推定されている。
・海洋にはおよそ200,000種の特定された種がいるが、実際の数は何百万にも及ぶと考えられている。
・海洋は地球温暖化の影響を緩和し、人間によって発生する二酸化炭素の約30%を吸収する。
・海洋はタンパク質の世界最大のタンパク質源であり、30億人以上の人々が主要なタンパク質供給源として海洋に依存している。
・海洋漁業では、直接的または間接的に2億人を従事している。
・オープン・オーシャンのサイトでは、産業革命の開始以来、海洋の酸性度が26%上昇したことを示している。
・沿岸の水は汚染と富栄養化により悪化している。このまま推移すれば、沿岸部の富栄養化は2050年までに海洋生態系の20%で増加すると予想されている。
まとめ
海洋は食料、医薬品、バイオ燃料などの主要天然資源を提供しています。
また、廃棄物と汚染の分解と除去を助け、沿岸生態系は暴風雨による被害を軽減するためのバッファーとしても機能しています。
健全な海を維持することは、気候変動緩和を支援することに繋がるのです。
もちろん、観光やレクリエーションにも最適な場所であり、人間が守るべき大切な天然資源として健全な海の維持に世界が共同して取り組むことが重要です。
※1 目標14の概要文は国際連合広報センターHPより引用
参考サイト
・国連HP
・外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダ」