戸建て住宅を中心に、空き家の管理不全による地域の防災性・防犯性の低下や居住環境の悪化などによって全国的に社会問題化している空き家問題について紹介します。
空き家とは
空家等対策の推進に関する特別措置法による「空家等」の定義によると「「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。」とされています。
特に国土交通省では1年以上住んでいない、または使われていない家を「空き家」と定め、さらにそのまま放置すれば倒壊等の危険性があるもの、衛生上有害となりうるもの、景観を損なっているもの、放置することが不適切である状態のものを「特定空家」と定めています。
空き家の現状
平成25年総務省の住宅・土地統計調査によると、国内の空き家の数は2013年で820万戸存在しました。この数は住宅数全体の13.5%に相当しています。
空き家の種類による内訳としては賃貸用が429万戸、売却用が31万戸、別荘などの二次的住宅が41万戸、その他の住宅が318万戸となっています。<出典:平成25年総務省住宅・土地統計調査>
その他の住宅とは賃貸又は売却の予定がなく、別荘等でもない空き家であり、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅などが含まれます。他の種類と比べると管理が不十分になりがちだと考えられるのです。
空き家の種類別の推移を見る(下図参照)と1983年から2013年の20年間で空き家の総数は倍以上に増えていることがわかります。
特に「賃貸用又は売却用」の空き家の増加率は減少していますが、「その他の住宅」の増加率が上昇していることが注目すべき点です。
管理が不十分になりがちだと考えられる「その他の住宅」が空き家全体の39%を占めており、増加傾向にあるということがデータからわかります。
空き家によって発生する問題
空き家がなぜ社会問題化しているかというと住居が空き家になってしまうことで発生する問題が多数存在することが背景にあります。
空き家によって発生が懸念される問題には以下があります。
・防災性の低下
倒壊、崩壊、屋根・外壁の落下、火災発生のおそれがあります。
・防犯性の低下
犯罪を誘発しやすくなります。
・ごみの不法投棄
ごみなどの不法投棄を誘発します。
・衛生の悪化、悪臭の発生
蚊、蠅、ネズミ、野良猫の発生、集中を招きます。
・風景、景観の悪化
・その他
樹枝の越境、雑草の繁茂、落ち葉の飛散等
空き家が発生する原因
空き家が発生する原因は住居の取得理由と取得した住居の状態によって、多少異なりますが、下図のデータから発生する原因について1つの推察が得られます。
<出典:平成26年空家実態調査 集計結果(国土交通省)>
上図は空き家となっている住居の取得理由と取得した住居の建築時期のデータです。
ここから建築時期の古い住居ほど「相続した」の割合が高く、昭和55年以前までは過半数の状態が続いていることがわかります。
相続した建築年数の古い住居は不動産価値が低くなりがちであり、建て替えるにもお金が必要で相続者が手付かずで放置してしまうことが原因とも考えられます。
個々の状況によって原因は多少ことなりますが、相続が空き家問題と少なからず関わりがあると考えられるでしょう。
解決に向けての取り組み
空き家問題の解決には不動産所有者、行政、民間企業など様々なステークホルダーの取り組みや法律への対応が必要となります。
ここでは民間の取り組むで空き家問題の解決に取り組んでいる事例を紹介します。
築60年の空き家に価値を吹き込み、地域を活性化させる「ここくらす」
「ここくらす」では、代表の荒井聖輝氏のお母様が相続した築数十年の空アパートを「しぇあひるずヨコハマ」としてリニューアルし、住宅提供を行うサービスを運営しています。
普通のアパートとは違い、住人がともに食事をする場所や屋上、風呂やキッチンなどを共用として、住人間のコミュニケーションが活発になる仕掛けがたくさん込められた住居やエリアを創造しています。
<ここくらすHPより>
通常であれば築60年の住居の不動産価値は低いですが、ビンテージの共同住宅として魅力を引き出すことで、「しぇあひるずヨコハマ」だけでなく近隣の不動産価値も上昇させることに成功しています。
築年数の古い住居の相続という空き家の課題を解決する1つの手段となりそうです。