SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、持続可能な世界を実現するための17の目標と169のターゲットから構成されており、2015年9月の国連サミットで193の国連加盟国の合意によって採択された2016年から2030年までの国際目標です。
ここでは、目標3の「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」について解説します。
目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」
あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進することは、持続可能な開発に欠かせません。
平均寿命を延ばし、子どもと妊産婦の死亡に関連する一般的な要因のいくつかを減らすという点では、長足の進歩が見られています。
また、きれいな水と衛生へのアクセスの拡大と、マラリア、結核、ポリオ、HIV/エイズ蔓延の削減についても、大きな前進が達成されています。
しかし、様々な疾病を完全に根絶し、新旧の多様な健康問題に対処するためには、さらに一層の取り組みが必要です。(※1)
目標3のターゲット
目標3におけるターゲットは下記の13項目です。
3.1 2030 年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生 10 万人当たり 70 人未満に削減する。
3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 12 件以下まで減らし、5 歳以下死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 25 件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び 5 歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.3 2030 年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
3.4 2030 年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて 3 分の 1 減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
3.6 2020 年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.7 2030 年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。
3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.9 2030 年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
3.a すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
3.d すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。
健康と福祉の現状
目標3の「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」に対する具体的な成果指標として13のターゲットを紹介しました。
これらのターゲットを達成するには、現状とのギャップを知り、そのギャップを埋めるためのアクションが必要となります。以下は健康と福祉の現状を表すデータです。
子どもの健康
・500万人以上の子どもが毎年5歳の誕生日前に死亡している。
・2000年以来、麻疹(はしか)ワクチンが約1560万人の子どもの命を助けた。
・世界的な進歩にもかかわらず、サブサハラ・アフリカと南アジアでは児童死亡者が増加している。 これらの地域では、5歳未満の子供が5人に4人の割合で死亡する。
・貧困家庭に生まれた子どもたちは、5歳までの死亡率が富裕層の家庭の子どもたちに比べてほぼ2倍の死亡率である。
・教育を受けた母親(初等教育のみでさえも)の子供は、教育を受けていない母親の子供よりも死亡する可能性が低い。
妊産婦の健康
・妊産婦の死亡率は2000年以来37%低下している。
・東アジア、北アフリカ、南アジアでは、妊産婦の死亡率が約3分の2にまで低下している。
・しかし、発展途上国の妊産婦死亡率は、先進国の14倍である。
・現在は多くの女性が妊産婦のケアを受けられるようになってきた。 発展途上地域では、妊産婦ケアの達成率が1990年の65%から2012年には83%に増加した。
・発展途上国では半分の女性だけが、必要な医療費として推奨されている額を受け取ることができる。
・ほとんどの発展途上地域で10代が子どもを持つことは減ってはきているが、進歩は遅い。 1990年代に避妊の大幅な増加が見られたが、2000年代にはあまり見られなかった。
HIV /エイズ、マラリアなどの疾病の現状
・2017年時点で世界の3690万人がHIVを患っている。
・2017年には2170万人が抗レトロウイルス療法を受けることができた。
・2017年に180万人が新たにHIVに感染した。
・2017年に94万人がエイズ関連の疾患で死亡した。
・流行の開始以来、7,730万人がHIVに感染している。
・流行の開始以来、3540万人がエイズ関連の疾患で死亡している。
・結核は、HIV感染者の最も多い死亡原因であり、エイズ関連の死亡者の約1/3を占めている。
・世界中で少女や若い女性がジェンダーに基づく不平等、差別、暴力に直面しており、HIVになるリスクが高い。
・HIVは世界中の出産年齢の女性にとって主要な死因である。
・エイズは現在、アフリカの青少年(10-19歳)の一番の死因であり、世界的にも青少年の死亡原因の2番目の多さとなっている。
・2000年から2015年にかけて、主にサブサハラ・アフリカの5歳未満の子供のうち、620万人のマラリアによる死亡が避けられた。 世界のマラリア発症率は37%、死亡率は58%まで低下している。
まとめ
健康であることは人間が生きていく上で最も基本的な要素です。教育を受けるにも仕事をするにも人として豊かに生きていくためには健康であることが重要であり、その権利が全ての人に与えられるべきです。
先進国ではすでに予防可能である疾病で、途上国で命を落としている子どもたちがたくさんいます。
すべての人が健康的な生活を確保できるよう先進地域の意識改革や支援活動が求められます。
※1 目標3の概要文は国際連合広報センターHPより引用
参考サイト
・国連HP
・外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダ」