人口減少の進む日本。都心部はともかく、地方では、都市部への人口流出に伴い、より深刻な状況にあります。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が新たにまとめた地域別将来推計人口によると、全都道府県が2030年から人口減に陥り、2045年に市区町村の7割が2015年比で20%以上人口が減ることが予測されています。
各地域で人口が減少すれば、財源不足による行政サービスの維持はもちろんのこと、それに伴いコミュニティ・インフラの維持が困難となることが予想されています。そのような将来おこりうる状況に備えて、各地方では、都市部の人々を地方に呼び込む動きを行っています。
都市部の人々が、地方に移住していく流れは、「UIJターン」といわれています。今回はUIJターンについて現状や促進に向けた取り組みを紹介します。
UIJターンとは
UIJターンは、「Uターン」「Iターン」「Jターン」といわれる都市から地方への移住の流れの総称をさします。
「Uターン」は、生まれ育った地方から、進学または就職を機に都市部に移り住んだ人々が、生まれ育った地方に移住することをいいます。
「Iターン」は、生まれ育ちに関係なく、都市部から地方部に移住することをいいます。
「Jターン」は、生まれ育った地方から、進学または就職を機に都市部に移り住んだ人々が、自分の生まれ育った地方から近い地域に移住することをさします。
それぞれの事例を実際の市町村にあてはめて考えてみましょう。
山口県周南市出身のAさん。大学進学を機に東京に上京しました。その後、就職では地元周南市で就職。この事例はUターンになります。
次に同じ山口県周南市出身のBさん。同じく大学進学を機に東京に上京しました。就職は、山口県からも近く、求人も多い、広島で就職しました。これは、Jターンになります。
最後に東京都出身のCさん。大学で農業を学んだことをきっかけに、田舎で就農することを希望。山口県周南市で就農しました。この事例は、Iターンになります。
UIJターンについてのデータ
2015年2月に、全国の個人を対象にインターネットを通じて実施した、国土交通省の調査では、地方において、23%が定住者、55%がUターン、14%がJターンまたはIターンであるという結果が出ています。一度も地元を出たことがないという人々は少数派となっています。
また、内閣府が調査した、農山漁村への移住希望についてのアンケートによると、若年層の農山漁村への移住への関心は上がっているというデータがあります。
2005年調査では、30代で移住希望者が17.2%、40代で15.9%であったのに対して、2014年調査ではそれぞれ32.7%と35.0%に伸びています。
UIJターン増加に向けた取り組み
認定NPO法人ふるさと回帰センター
ふるさと回帰支援センターは、地方暮らしやUIJターン、地域との交流を深めたい人をサポートするために、東京・大阪を除く45道府県の自治体と連携して地域の情報を提供し、都市と農村の橋渡しによって地方の再生、地域活性化を目指しているNPO法人です。
具体的にはUIJターンを考えている都市住民の相談、移住・定住者の増加を目指す地方自体への研修、各地方への移住・定住についてのセミナーを行っています。
<画像はふるさと回帰センターHPより>
山口県との提携事例
具体的な提携事例として、山口県との提携事例を紹介します。山口県とふるさと回帰支援センターでは、山口県へのUIJターン増加への取り組みとして、2018年度から「やまぐちYY!ターンカレッジ」というセミナーを年6回行っています。
セミナーでは山口県にUIJターンをして活躍しているゲストのトークセッションと、各自治体職員および移住者と、移住希望者との相談会を行います。各セミナーでは、「しごと」「山」「海」など、テーマを設け、登場するゲストや自治体もそれに合わせて変わる仕組みになっています。
また、これに加えて、セミナー参加者向けに、山口県でUIJターンをして活躍している移住者に会いに行けるツアーを3回にわたって実施しています。
UIJターンに向けた課題
UIJターン普及の課題としては、移住希望者の希望する仕事が地方にないことや、都市と地方との生活のギャップから移住を躊躇したり、移住しても元々住んでいた地域に帰ってしまうことが多いことがあげられます。
今後は移住者の多様なニーズに合わせた雇用の創出や、ミスマッチを防ぐために一定期間の「お試し移住」などの取り組みが求められているといえます。また、UJIターンを受け入れる地域側も、移住者増加に向けてより魅力ある地域づくりに取り組む必要があるでしょう。
まとめ
UIJターン希望者は増えているといはいえ、実際にUIJターンに成功して地方で活躍している人はまだまだ少ないのが現状です。
解決には、地方での雇用の創出や、山口県のように移住希望者向けのツアーを組み、移住希望者と移住地域の距離を縮めていく取り組みが求められているのではないでしょうか。