ストリートチルドレンの実態:貧困のサイクルを断ち切るために

貧困地域の課題において根本的で持続的な解決を図る手段として、重要なのが「教育」であると言われています。学校があれば子どもたちが教育を受けることで、貧困に起因する様々な不のサイクルを断ち切ることに貢献できます。

そこで、教育環境の整備が様々なところで進められていますが、学校があったとしても十分な教育を受けられない子どもたちが存在します。それが、ストリートチルドレンです。

子どもたちが教育を受けるには、教育が受けられる空間だけでなく、受けられる状態を創り出すことも重要です。ここでは教育が受けられる状態を創り出すという観点から、ストリートチルドレンの問題についてご紹介します。

ストリートチルドレンとは

ストリートチルドレンとは 原因

ストリートチルドレンの定義については、明確な定義はなくばらつきがありますが、ここではストリートチルドレンを
・家族を離れ、あるいは失い、子どもだけで生活している者
・貧困家庭から家計を支えるために路上に働きに来ている者
・家族全員が路上に暮らしている者
と定義※1します。

ストリートチルドレンというと親がいない路上で生活をしている子どもたちと思われがちですが、生活費を稼ぐために日中働きに出て、夜は親のもとに帰るという子どもたちもストリートチルドレンに含まれています。

ストリートチルドレンのデータ

世界には1億5000万人のストリートチルドレンがいると推定※2されています。世界の子どもの数(15歳未満)は19億1580万人※3なので約7.9%の子どもはストリートチルドレンであると考えられます。

UNICEF(ユニセフ)によるジンバブエでのストリートチルドレンの実態調査※4(ジンバブエのストリートチルドレン260人を対象)によると、ストリートチルドレンの男女比は男性が75.6%、女性が24.2%でした。
そのうち、ストリートで寝ている者は56.9%、家で寝ている者が31.4%、家とストリートの両方で寝る者が11.8%でした。
ストリートチルドレン 男女比 寝る場所
年齢層は5歳未満が7.6%、6~10歳が24.3%、11~15歳が42.2%、16~18歳が25.9%です。
経済活動としては、乞食が45.7%、車のガードが21.2%、衣類を売っている者が14.7%、車洗いが13.1%、盲目の人をエスコートする者が4.1%、タクシーの勧誘が1.2%でした。
ストリートチルドレン 仕事
また、彼ら彼女らがどのように食事を得ているかというインタビューでは、購入が62.3%、レストランの残飯が18.2%、家からが9.1%、ドロップインセンター※5からが8.2%、その他が2.2%でした。

上記のデータから彼ら彼女らは、ストリートでの経済活動を通して、自らの食事要件を満たせているとも考えられますが、支出割合では彼ら彼女らの88.4%がすべてを自らの食事のために利用しており、食べるためだけに働いている状態とも言えます。

学校に通っている割合に関しては、一度もないが25.5%、初等教育1~3年が21.9%、初等教育4~7年が38.2%、中等教育1~2年が8.8%、中等教育3~4年が4.8%という結果でした。
ストリートチルドレン 学校
そして、自身のストリート生活についてどのように捉えているかという問いに対して、28.5%は絶望的で無力感を感じており、ストリートで生活する以外に選択肢がないと答え、25.8%はストリートでの生活は厳しく、難しいと答え、20.8%は人生が荒涼しており未来がないと答え、11.3%はストリートでの生活は一時的であると答え、10.3%がストリートでの生活を楽しんでいると答えました。
ストリートチルドレン 生活 感情
また、彼ら彼女らがストリートチルドレンになった理由については、家族のための収入を稼ぐためが35.3%、両親がいないためが30.7%、家庭内暴力を受けていたためが18.3%、雇用が7.3%、犯罪を犯し、家から逃げたためが6.4%でした。
ストリートチルドレン 理由 原因
これらのデータはジンバブエのストリートチルドレンへのインタビューの結果であるため、他の国や地域のすべてのストリートチルドレンが同じような割合であるとは言い切れませんが、大まかなカテゴリーとしてはほとんどのストリートチルドレンの境遇を表していると言えるでしょう。

ストリートチルドレンが生まれてしまう原因

ジンバブエでのデータにおいて、一人一人の子供がストリートチルドレンになってしまった理由を紹介しましたが、そういった個人個人の原因は社会構造が起因となっていると考えられています。

ストリートチルドレン問題の根本的な要因となる社会構造とは、不十分な政策運営と不平等な分配、HIV/AIDSなどの蔓延です。また、紛争や自然災害なども大枠の要因として考えられます。

そのような経済停滞や経済格差が広がりやすく、ストレスや死の危険が多い社会環境下では、家族の貧困やアルコール・薬物依存、セーフティーネットの欠如、親の死などが起こりやすく、ストリートチルドレンにならざるおえなくなる子どもたちを生み出してしまいます。

そして、ストリートチルドレンとなった子どもたちは、十分な栄養を取ることができず、満足な教育を受けることもできなくなってしまいます。また、HIV/AIDSや感染症、薬物中毒、性的暴行、人身売買の危険にもさらされます。

このような環境で育つ子どもたちは将来的に定職に就けず、犯罪者や薬物などの依存者となってしまう可能性が高いです。そして、彼ら彼女らの子どもたちもまた同じような境遇に生まれてしまいます。

こうした構造を放置すると、ストリートチルドレンから抜け出せない子どもたちの不のサイクルを生み出してしまい、生きる権利や子どもの権利が保障されている世の中で世界的に深刻な問題と言えます。

ストリートチルドレン問題の解決への取り組み

ストリートチルドレンの問題は政治経済情勢から個人まで多様な要因が存在し、解決へのアプローチも多様なものが考えられます。ここではビジネスで解決に取り組んでいる事例についてご紹介します。

社会貢献ができるグルメアプリ「テーブルクロス」

「テーブルクロス」ではユーザーが飲食店の予約をテーブルクロスのアプリを通して行うと、予約した人数分の給食が途上国の子どもたちに届くというサービスを展開しています。

成果報酬型で飲食店からの広告を掲載し、予約成立の広告売り上げの一部を提携しているNPO法人に給食費として支援することで、途上国の子どもたちに給食を届けることを実現しています。よって、ユーザーにとっては寄付負担が実質的に発生していませんが、お店を予約することで給食支援を行うことに貢献できます。

給食支援を行うことで、食費のために働いていた子どもたちが、学校に行く時間ときっかけをつくることができ、学校で授業を受けられる状態づくりに貢献しています。
ストリートチルドレン 解決策 テーブルクロス
>> テーブルクロスのホームページ

まとめ

ストリートチルドレンの問題はこどもたち個々人の支援はもちろんですが、そうならざるおえない子どもたちを生み出してしまう社会構造の根本的な改善にも取り組まなければならない難しい課題です。

また、一過性の支援ではなく、持続的に支援できる仕組みを作り出さなければ、根本的な解決には繋がらないでしょう。

ストリートチルドレンの子どもたちが教育を受けられる状態を創り出し、彼らが自立して満足な生活ができる状態にすることが、貧困のサイクルを断ち切り、ストリートチルドレンが生まれなくなる社会をつくることに貢献できるのではないでしょうか。

※1 UNICEFの定義 ※2 UN(国際連合)の推計 ※3総務省統計局2015年 ※4 参照URL(https://www.unicef.org/evaldatabase/files/ZIM_01-805.pdf) ※5 ドロップインセンターは精神障害、ホームレス、ティーンエイジャーなどのコミュニティのためのサービス機関で、食料やその他のサービスを提供しています。

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